21/09/2026
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ベトナムの中秋節――昔も今も、月明かりの下に集う夜

秋の夜、空に丸い月が浮かぶころ。

ベトナムでは、子どもたちが色とりどりのランタンを手に町へ出かけ、どこからか獅子舞の太鼓の音が聞こえてきます。

旧暦8月15日の
「Tết Trung Thu(テット・チュン・トゥー)」。

ベトナムの中秋節は、月を楽しむ日であると同時に、子どもたちや家族にとって大切な伝統行事です。

時代とともに街の景色は変わりました。

それでも、ランタンの灯り、子どもたちの笑顔、家族で月餅を囲む時間は、今もベトナムの秋に受け継がれています。

中秋節を待つ、昔のハノイ

今から100年以上前のハノイ。

中秋節が近づくと、店先には子どもたちのためのさまざまなおもちゃが並びました。

動物をかたどったもの、色鮮やかな紙のおもちゃ、素朴な手作りの飾り――。

今とは形が違っていても、
「もうすぐ中秋節がやってくる」という子どもたちのわくわくした気持ちは、きっと今と変わらなかったのでしょう。


1915年ごろのハノイ。中秋節の時期に店先へ並べられた子ども向けの伝統玩具。
Photo: Léon Busy / Musée Albert-Kahn / Wikimedia Commons(CC0)

100年以上前にもあった、中秋節のにぎわい

中秋節のもう一つの楽しみが、
múa lân(獅子舞) や龍舞です。

太鼓の音に合わせて舞う獅子や龍。
その周りには、祭りを楽しむ人々や子どもたちが集まります。

実は、こうした中秋節の風景は今に始まったものではありません。

1913年にハノイで撮影された映像には、当時の中秋節の行列や獅子舞、龍舞の様子が残されています。

服装も、町並みも、今とはまったく違います。

それでも映像を見ていると、祭りを待ちわびる空気や、人々のにぎわいから、中秋節という文化が世代を越えて受け継がれてきたことを感じます。

映像はこちら

1913年・ハノイの中秋節の記録映像
1913年、ハノイで撮影された中秋節の記録映像。獅子舞や龍舞など、当時の祭りの様子を見ることができます。
Film: Léon Busy / Musée Albert-Kahn / Wikimedia Commons(CC0)

昔から今へ――変わる街、変わらない灯り

時代が進み、ランタンもずいぶんカラフルになりました。

今のハノイでは、中秋節が近づくと旧市街の店先にランタンやおもちゃがずらりと並び、町全体が華やかな雰囲気に包まれます。

特に夜になると、赤や黄色の灯りがともり、いつもの街が少し特別な景色に変わります。

昔の素朴な手作りのおもちゃとは姿が変わっても、
中秋節を待つ人々の気持ちは、今も変わりません。


ハノイ旧市街に並ぶ色鮮やかなランタン。
Photo: Mig Gilbert / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

子どもたちの手に揺れる「đèn ông sao」

ベトナムの中秋節を象徴するものの一つが、
星形のランタン 「đèn ông sao(デン・オン・サオ)」 です。

夜になると、子どもたちはランタンを手に歩きます。

暗い夜の中を、赤や緑の小さな星がいくつも揺れながら進んでいく――。

この風景は、多くのベトナム人にとって、子どものころの中秋節を思い出させるものです。

大人になっても、đèn ông saoを見ると、あのころの中秋節を思い出す。

そんな人も少なくありません。

子どもたちの「đèn ông sao」行列
星形のランタン「đèn ông sao」を手に、中秋節を楽しむベトナムの子どもたち。
Photo: Viethavvh / Wikimedia Commons(Public Domain)

家族で囲む、中秋節のもう一つの風景

にぎやかなランタンや獅子舞だけが、中秋節ではありません。

家に帰れば、そこにはもう一つの大切な時間があります。

家族が集まり、
bánh trung thu(月餅) や果物、お茶などを囲む時間です。

一つの月餅を小さく切って、みんなで分けて食べる。

子どもたちはお菓子や果物を楽しみ、大人たちはお茶を飲みながらゆっくり話す。

ベトナムでは、この中秋節のごちそうを囲んで楽しむことを
「phá cỗ」 と呼びます。

華やかな祭りの裏側には、そんな静かで温かな家族の時間があります。

ハノイの家庭の中秋節の「cỗ」

写真には月餅だけでなく、バナナ、柿、そしてハノイの秋を代表する cốm(若いもち米) なども並んでいます。
ハノイの家庭で囲む中秋節の食卓。月餅、果物、cốmなどが並びます。
Photo: Viethavvh / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

月を見上げる夜に、今も残っているもの

100年以上前の写真や映像に残る中秋節と、今のベトナムの中秋節。

並べて見てみると、服装も町並みも、ランタンのデザインも大きく変わりました。

それでも、

子どもたちが灯りを手に歩くこと。
獅子舞の太鼓に胸を躍らせること。
家族で食卓を囲むこと。
そして、大切な人と同じ月を見上げること。

そんな時間は、今も変わらず受け継がれています。

ランタンの灯り。
太鼓の音。
月餅の甘い香り。
そして、家族の笑い声。

「Tết Trung Thu」 は、そんなベトナムの温かさが詰まった伝統行事です。

ベトナム語を勉強するとき、単語や文法だけでなく、その言葉の向こう側にある暮らしや文化にも触れてみると、ベトナムという国が少し近く感じられるかもしれません。

今年の中秋節は、ぜひ一度、
ベトナムの夜空に浮かぶ月にも思いを馳せてみてください。 🌕🏮